各手法のメリット・デメリット
M&Aの手法としてはいくつかありますので、順に見ていくことにしましょう。あわせて、そのメリット・デメリットにも触れていきます。
1.株式譲渡
これは、売り手が買い手に株式を売却する方法です。通常は現金を売り手に渡します。買い手が個人ではなく、通常は会社なので、売り手の会社は、買い手の会社の子会社になります。
メリット
@売り手の株式譲渡益に課せられる税率は20%(非公開会社)なので、税引き後の手取現金が多い。
A簡便である。売り手の会社が株式の譲渡に取締役会の承認が必要ならば、取締役会決議ですむ。
B売り手と買い手が別法人であり、企業文化摩擦があまりない。
デメリット
@売り手の会社に、引き継ぎなくない資産・負債があっても引き継がなくてはならない。特に簿外の債務がある場合は問題となる。
A別法人なので、グループとしての融合が遅く、シナジー効果が表れるのが遅い。
2.合併
売り手会社が買い手会社を包括的に吸収する方法です。当然、買い手会社は消滅します。売り手会社の株主は、通常は買い手会社の株式(現金も可)をもらいます。
メリット
@買い手は対価として、通常は株式を発行するのでお金が不要である。
A手続きはそれほど複雑ではない。
B売り手と買い手が同一法人となるので、統合効果が早く表れる。
デメリット
@売り手と買い手が、同一法人となるので、文化摩擦が起こる場合がある。
A売り手が入手する株式が非公開の場合、売り手は株式の現金化が困難である。
B売り手の会社に、引き継ぎなくない資産・負債があっても引き継がなくてはならない。特に簿外の債務がある場合は問題となる。
3.事業譲渡
商法で言う営業譲渡です。売り手の事業(資産・負債・人材等)を買い手に売却する方法です。これは売却代金が売り手会社に入ります。
メリット
@買い手は、好きな事業だけ選んで、購入できるので、簿外債務等を引き継ぐリスクが低い抑えられる。
デメリット
@買い手は個別に資産を選定する必要があるので、煩雑である。
A従業員の同意が必要とされる。
B資産の譲渡となるので、取引に消費税が課される。
4.株式交換
買い手会社が、売り手会社の株主から、売り手会社株式を受取り、対価として株式を交付します。これにより、売り手会社は買い手会社の子会社となります。
メリット
@買い手は現金が不要である。
A売り手と買い手が別法人であり、企業文化摩擦があまりない。
デメリット
@売り手が入手する株式が非公開の場合、売り手は株式の現金化が困難である。
5.新株発行
売り手会社が新株を発行して、買い手会社が売り手会社の議決権の過半数を取得します。
メリット
@買い手会社は全株取得するほどには、お金を必要としない。
A買い手会社のお金が事業資金として使われる。
デメリット
@売り手株主がお金を手にできない
A買い手会社は100%の議決権を取得できない。
会社分割
売り手会社の一部事業を切り出して、買い手会社に吸収させる方法です。売り手株主は、通常は買い手会社の株主となります。
メリット
@買い手はお金がかからない。
A事業の法的移転が事業譲渡より簡便である。
B売り手と買い手が同一法人となるので、統合効果が早く表れる。
デメリット
@売り手と買い手が同一法人となるので、文化摩擦が起こる場合がある。
A売り手が入手する株式が非公開の場合、売り手は株式の現金化が困難である。
いろいろの手法がありますが、中小企業のM&Aで最も多いのが株式譲渡です。買い手が嫌がらなければ、売り手にとってこれが最も簡便です。