M&A 基本合意書
基本合意書についてです。
これは売り手と買い手がこのM&Aに関して、基本的な事項で合意ができた場合に交わされるものです。必ず交わされるとも限りませんが、通常は交わされます。内容については案件ごとに異なってきますが、共通している項目をあげます。
@買収形態及びその範囲
これはこのM&Aの対象となっているのが、何なのかを明確します。株式譲渡なのか、事業譲渡なのか、株式譲渡の場合には、発行済株式全部なのか、それとも一部なのか、事業譲渡の場合なら、どの事業なのかということです。
A買収価格
記載されない場合もありますが、普通は記載されます。この交渉の中で、通常最も重要な部分は価格ですから、合意ができるなら記載します。逆に言えば、明らかに合意できないほどの価格差が生じている場合には、最終合意に達する可能性は小さいので、基本合意を結ぶ意味が弱いかもしれません。
B独占的交渉権
これは、他を排除して交渉する権利のことですが、普通は基本合意書に組み込まれます。買い手からすれば、他社に取られなくなるわけですから、早期に付与されたいと思いますし、売り手からすれば、なるべく遅いタイミングで、本当にこの相手でいいのか、と慎重に決める必要があります。この独占的交渉権の期間は、案件によっても様々ですが、通常は60日〜90日が多いようです。
C秘密保持
これは、交渉によって知りえた情報を他の第三者に開示しないことを約束するものです。基本合意の公表も相手側の了解が必要となります。もちろん、公開会社では、開示が要求されますが、非公開会社はこのタイミングでは通常は開示されません。それと秘密保持にも有効期限が設けられます。これは交渉が決裂した場合に備えてです。
D善管注意義務
これは善良なる管理者としての正当なる注意義務をはたす、というものです。これは、交渉中に対象企業の内容が大きく変わらないことを、売り手の義務として課すことを意味しまう。具体的には以下の事項です。
・通常の営業を行う
・従業員の賃金水準などの雇用条件の大幅な変更をしない
・増資、減資を行わない。
・重要な営業の譲渡、廃止、新設、大幅な設備投資を行わない
・多額の新規借入れを行わない
この基本合意書には法的拘束力を持たせないのが一般的です。そのための規程をいれます。ですから、最終合意にいたらなくても、通常は違約金の支払は発生しません。それではなぜ、こうしたものを結ぶのでしょうか。
@当事者の誠実義務を促す(お互いに約束を守りましょう)
A買い手は、独占的交渉権をもつので、慎重に判断できる
B最終契約までのスケジュールが明確になる
C最終契約書の基礎となり、最終契約書作成の時間が短くなる
D基本合意に達しなければ、重大な問題で合意とならないということであるから、見切りがお互いに早くできる
こうしたことを理由に基本合意書を結びますし、私もその方がよいと思います。ちなみに基本合意書でなくても、その簡易版として、趣意書やターム・シートと言って、項目を箇条書きにしたもので代替することもあります。